演劇的空間。

 毎日のように芝居のお知らせを頂く。とても全部を拝見する事は出来ず、申し訳ありません。

 

3月に入り、心に残る作品にいくつか出会いました。

  

鷺ノ宮にある古民家で上演それた「ドアを開ければいつも」は、母の7回忌に実家に集まった4人姉妹のお話でした。その実家のイメージが古民家そのもので、畳の居間での会話が超リアル。本物の古民家全体が物語の世界となり、4姉妹の葛藤が切なく臨場感溢れる心温まる芝居でした。姉妹を演じた4人の女優は皆さん素晴らしく、劇団道学先生の青山勝さんの演出も姉妹を包み込むようで素敵な空間でした。

  

Pカンパニーの「白い花を隠す」は、メディアの真実と正義とは何か。組織で生きる者の真実と正義とは何か。人間が生きる為の真実と正義とは何か。を問う心に突き刺さる社会派の作品でした。難しいテーマでありながら、頭でっかちな演劇にならず、演劇エンターテイメントとして楽しめる作品でした。作家の石原燃さんの筆力も見事だし、作品に真摯に向き合う俳優陣も清々しい程でした。

  

劇団ひまわり研究科卒業公演「さんしょう大夫」は、若い研究生達に和楽器奏者の木村俊介さんと箏曲の稲葉美和さん、ふたりのプロが本気で力を貸して、見応えのある舞台になりました。プロが奏でる音色が一瞬で劇場空間を異世界へと誘い、その音色に呼応するように若い俳優達が懸命に劇世界を生きる。あの空気に触れられた彼らは、きっと大きく羽ばたくだろうと期待します。いつも全力で演出する山下晃彦さんの情熱も良い刺激になったでしょう。

  

劇団だるま座のワークショップ発表会「走れメロス」と「ロング・グッドバイ」は、プロの演出家菊地一浩氏の指導を受けて、参加した若者たちは良い刺激を受けたと思います。これからが楽しみです。

  

軽いノリのラブコメやお笑いが大流行の昨今、人間の生きる姿を深く見つめるこれらの作品がかえって新鮮でした。あの空間に自分もいたかったと思える、それぞれに素晴らしい演劇的空間でした。